常夜鍋


夫がリクエストするので、また常夜鍋
ところで、常夜鍋といえば向田邦子、ということくらいは私も知っています。が、読んだことがなかったので、常夜鍋のことを書いたエッセイが収録されている「夜中の薔薇」を読んでみました。今回はその本にあるとおりに作っています。ただし、私達は若い男の子ではないのでお肉はひとり100グラム、ごまだれがまだ残っているので、レモン醤油は今回はなしで。

 豚鍋のほうは、これまた安くて簡単である。
 材料は豚ロースをしゃぶしゃぶ用に切ってもらう。これは、薄ければ薄いほうがおいしい。
 透かして新聞が読めるくらい薄く切ったのを一人二百グラムは用意する。食べ盛りの若い男の子だったら、三百グラムはいる。それにほうれん草を二人で一把。
 まず大きい鍋に湯を沸かす。
 沸いてきたら、湯の量の三割ほどの酒を入れる。これは日本酒の辛口がいい。できたら特級酒のほうがおいしい。
 そこへ、皮をむいたにんにくを一かけ。その倍量の皮をむいたしょうがを、丸のままほうりこむ。
 二、三分もたつと、いい匂いがしてくる。
 そこへ豚肉を各自が一枚ずつ入れ、箸で泳がすようにして(ただし牛肉のしゃぶしゃぶより多少火のとおりを丁寧に)、レモン醤油で食べる。それだけである。(中略)
 ひとわたり肉を食べ、アクをすくってから、ほうれん草を入れる。
 このほうれん草も、包丁で細かに切ったりせず、ひげ根だけをとったら、あとは手で二つに千切り、そのままほうりこむ。(中略)
 豆腐を入れてもおいしいことはおいしいが、私は、豚肉とほうれん草。これだけのほうが好きだ。
(「食らわんか」より)

このエッセイ、ほかにも簡単なんだけどおいしそうなお料理が色々載っていて、夜中に読むと台所に立ちたくなります。

夜中の薔薇 (講談社文庫)

夜中の薔薇 (講談社文庫)